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エッセイ

1年主管 山本昭夫|「異界に住む」

 山手線車内で「異界」ということばが目に入った.宮崎駿監督『ハウルの動く城』封切関係の車内吊り広告である.「異界がいいかい」ということばが頭に浮かび,高等科だよりの題に決めた.
 神話や伝説のあるところには異界が存在する.「日本異界絵巻」(小松和彦・宮田登・鎌田東二・南伸坊著,ちくま文庫,一九九九年)は,スサノヲやねずみ男等の伝説的存在,空海や源義経等の実在の超人を含めた異人史を紹介する.
 現実社会においても「異界」を感じることがあるだろう.留学生は,周囲を「異界」と感じるだろうし,田舎者は都会が「異界」で,またその反対も然り.
 1年生にとって,1学期はじめは高等科が「異界」だっただろうが,2学期が終了して,もうすっかり土着民のように住み着いている者もいる.まだ慣れなくて「異界」に彷徨った人=「異人」もいる.読者はどちらだろうか.
 学校に来ることがとにかく好きな者は,土着民である.高等科が棲家になり,目白に来るとホッとする.一方で,仲間意識を持ち,派閥ができる.
 高等科生活に違和感を持つ者は,「異人」である.旅人のような自由人である.「異人」は,他に自らの世界を持つ分,土着民よりも「異界」を客観的に見る ことができる.自分自身も客観的に見ることができる.そして成長する.宮崎駿監督作品には,異界を題材にしたものが多いが,いずれの主人公も異界を経て一 回り大きくなる.
 自分自身は,高等科において異人だと思うことがある.いや異物かもしれない.十数年在職していながら,そんな気分になる.一方で高等科には異物を受け入 れる度量があると常々思っている.それが高等科らしいところだと勝手に気に入っている.異なる存在が組織の活性化に一役買う.高等科の土着民はそれを心得 てほしいし,「異人」は,安易に周りに迎合しないことを望む.

3年主管 玉生謙介|「健全な体」

 今年度,一番の大きな変化といえばやはりグラウンドの人工芝化であろう.体育教師の中でも一番グラウンド に立つ機会が多く,専門がサッカーである僕にとって,最高の喜びだ.その喜びの中には君たちが今まで以上にグラウンドでサッカーやタッチフットボールを楽 しそうに真剣に取り組む姿も含まれる.今までの土のグラウンドでは見ることの出来なかった動きや積極性,また雨の中での授業という体験は,他では味わうこ との出来ない貴重な経験だと思う.三年生は残り少ない高等科生活となったが,卒業まで思う存分人工芝の上で運動を楽しんでもらいたい.
 先日,院長の講演会を聞く機会があった.「人間力を育てる」というテーマで僕にとって非常に興味深いものだった.その話の中で,院長は「健全な体に健全 な魂が宿る」とおっしゃっていた.確かにそうである.体が健全,健康でなければ,自分が思うままに気持ちよく行動や生活が出来なくなる恐れがあるし,気 力,活力もわかなくなってくるだろう.君たちは最低でも週に二回体育の授業を受け,体を動かしている.そういう面からすると,高等科生活で君たちは健全, 健康な体を育み,維持していると思う.心配はその先,卒業した後だ.運動をする機会がどんどん減っていく人が多いのではないだろうか.どんなに高等科生活 で健全,健康な体作りをしていても,その後ぱったりと運動をやめてしまえば,悲しいぐらいあっという間に体は衰える.これからは与えられて健全な体を維 持,増進するのではなく,自分で積極的に健全な体を維持,増進していかなければならない.是非,運動を生活の中に必ず入れ,習慣化してほしい.健全な体が 維持され,健全な魂が宿り,立派な人間に成長してくれることを願う.

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