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2017年度入学式

2017年度入学式が行われました。

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科長告辞
学習院高等科
科長 武市 憲幸

 新入生のみなさん、本日は入学おめでとうございます。学校として新しいスタートを切るこの日に、みなさんを迎え、この会を行えることを大変うれしく思っています。
 この学校は、古い歴史を持ち、その始まりは幕末の京都にまでさかのぼります。「学習院」という名は、島崎藤村の幕末を舞台にした「夜明け前」という小説にも出てまいります。また夏目漱石の評論として有名な「私の個人主義」という講演も、漱石が依頼を受けてこの学校で行われたものです。幕末にその始まりを持つ学習院は、維新後、明治10年、神田錦町に創設されたことを公のスタートとしていますので、それからでもすでに140年あまりの歴史が流れているわけです。
 本日この学校に入学された新入生の諸君も、こうした長い歴史の中に、新たな歴史を付け加えてゆくことになるわけです。ただし長い歴史があるということだけに安んじていては、新たな歴史につなげてゆくことはできないでしょう。歴史とは、常にその意味を問い返すことにこそ価値があるのではないでしょうか。ですから今日私は、ここで学習院の教育方針「ひろい視野」、「ゆたかな感受性」「たくましい創造力」、について改めて話してみたいと思います。
 まずは「ひろい視野」についてです。
「ひろい視野」とは、自分の小さな殻の中に閉じこもっていては手に入れることはできません。自分とは異質な価値観を持つ人や、モノやコトに触れ合うことによって得られるものではないでしょうか。クラスの中で、クラブ活動の中で、あるいは様々な教科の教員からたくさんの刺激を受けて欲しいと思います。自分の「個性」を他人の「個性」とぶつけあい、いわば「やすりにかけてゆくこと」が自分の本当の個性を発見してゆくことにつながってゆくのです。こうした過程を経ずに形作られる「個性」とは、独善的な思い込みに過ぎません。ですから、どうか単に、好き/嫌いという二分法だけでものごとを決めつけてしまわないで欲しいと思います。自分とは異質なものにこそ「世界」を広げる可能性がはらまれていることを忘れないでください。
 次に、「ゆたかな感受性」について話します。
「感受性」とは、人やモノやコトに触れて「心を動かす」、もっと言えば「心を震わせる」ことだと思います。ですから先ほどの述べた「視野」、つまり自分の触れ合う世界が広がってゆけば、おのずと「感受性」を働かせる幅も広がってゆくわけです。そして、その感受性を働かせる場は、何も「学校」という限定された場だけではないでしょう。例えば読書であったり、映画や音楽であったり、たくさんのものに触れて、「心を震わせ」て欲しいと思います。なぜならこの「感受性」というものは、君たちくらいの年代にその土台が形作られるからです。「ゆたかな感受性」とはつまるところ「ゆたかな人間性」につながってゆくのではないでしょうか。自戒の意味も含めて申しますが、どうか「つまらない大人」にならないで下さい。
 最後に「たくましい創造力」についてです。
「創造力」とは言うまでもなく、何かを生み出す力です。「何かを生み出す」というと、とても大袈裟なことのように聞こえるかもしれませんが、結果がすべてではありません。自分自身が、何かを生み出そうとして、一生懸命になること―生み出そうとするものがどのようなものであろうと、そのひたむきさこそが、人の心を打つのだと思います。そして「たくましい創造力」とは、「広い視野」と「ゆたかな感受性」に裏打ちされてこそ、その場限りのものではない真の意味で人の心を動かす力を持った「創造力」になるのだと思います。
私自身長い教員生活の中でこうした「たくましい創造力」によって自分の道を切り開いている多くの卒業生たちを知っています。そうした卒業生たちの存在が自分の長い教員生活を支える糧になっているといっても過言ではないでしょう。これから新しく高等科生活を始める新入生諸君も、先輩たちに続いて「たくましい創造力」を身につけて、充実した人生を歩んでほしいと思います。
 父母保証人の皆さま、本日の入学式には学校法人学習院を代表して内藤院長、耀専務理事、岩浅常務理事、荒木常務理事にご列席いただいております。またご来賓として東園桜友会会長、小堀父母会会長、一條中高桜友会会長、渡邊中高桜友会副会長にご列席いただいております。私たち学習院高等科の教職員一同、心からご子息のご入学をお祝い申し上げます。
 高校生は中学生とは異なり、親から離れ自立した存在へとその一歩を踏み出してゆく時期に当たります。保護者の方々は、これからご子息と適度な距離感を保つことに苦労される場面も多々あるかと思います。この時期の子供たちを「見守る」ということが、いかに難しいものかということは、私自身も、息子を一人持つ親の身としても日々実感しております。
 草花を育てるとき、水をやりすぎても、逆に足らなくても枯れてしまいます。さらに、それぞれの草花に必要な水の量も栄養も千差万別です。これは、私たちが子供を育てる、一人前の自立した人間にする、ということにも通じるものがあると思います。われわれ教員は、一人一人の個性にじっくりと向き合い、保護者の方々と協力し、ともに試行錯誤を繰り返しながら高等科3年間に寄り添ってゆけたらと考えております。どうぞよろしくお願いいたします。
 以上をもちまして、入学式の告辞といたします。