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高等科NEWS

2019年度卒業式

感染症対策のため例年よりも簡略化し、2019年度卒業式を行いました。

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高等科卒業式告辞


                             学習院高等科科長 

                                  武市憲幸



 卒業生のみなさん、そして父母保証人の皆様、本日はご卒業おめでとうございます。

 本来であれば、ここに在校生の諸君や来賓の方々をお招きして式を挙行するはずでしたが、ご存知のように新型コロナウィルス感染拡大を防止するために、このように簡易化した形で行わざるを得ませんでした。学校によっては、卒業生と教員のみの式や、式そのものを中止するケースもあるようです。しかし、われわれは、卒業生、保護者、教員で行うことを決断し、今日ここに式を挙行するに至りました。さまざまなご意見があるとは思いますが、学校生活を締めくくる大事な行事である卒業式をこのような形で行うことを何卒ご理解いただきたいと思います。

 私は本校に勤務して30年になりますが、その間このような形で式が行われたのは2011年東日本大震災の時でした。震災当日とそれに続く数日間の混乱は言うまでもありませんが、さらにその後の数週間、原子力発電所の問題や流通網の混乱による物資不足などで世情が殺伐とした雰囲気に覆われていたことは現在でもありありと記憶に残っています。むろん当時の状況と比較して現在を云々するつもりはありません。しかし、こうした先行きの見えない不安な状況にあるからこそ、きわめてありきたりな言い方になってしまいますが、「他人への思いやり」を大切にして欲しいと願っています。かつての体験を教訓として活かすことはわれわれの務めであると考えます。そして、高等科で3年間を過ごしたみなさんならば、このありきたりではあるが、実践することが容易くはない、「他人への思いやり」を保ち続けることの大切さを分かってくれるだろうと信じています。

君たちは高等科での課程を終えて、これから、より専門的な教育課程に進んでゆくわけです。とは言っても、それもとりあえずの通過点に過ぎないのかもしれません。自分が生涯をかけてやるべきことに辿り着くためには、これからもさまざまな試行錯誤が必要になるのだと思います。もしかしたら、その試行錯誤の果てに、自分が今まで考えてもみなかった場所に辿り着いているかもしれません。また、一つの道を辿ってゆくにせよ、壁にぶつかり、立ち往生してしまうこともあるでしょう。

私たちは君たちの個性を大切にして、将来その個性を土台にして自分自身の人生を切り拓いてゆけるようになることを何よりも大切に考えて来ました。ですからそれが本当に自分自身を活かせる場所であるならば、つまずいたり、転んだりしながらでも、そしてそれが傍から見てどんなに無様であろうと、その場所にむけて歩み続けて下さい。

 先ほど「先行きの見えない不安」ということを述べました。また、昨今新型コロナウィルスが、社会に与える影響を懸念する声がそこかしこで挙がっています。おそらく、この一連のウィルス騒動が終息した後でも、「不安」はその度合いを増しこそすれ、なくなることはないでしょう。社会を覆うこの不安に対して、それがまるでないかのように振る舞い、やり過ごそうとするのは、時代に対してあまりに不誠実な態度であると思います。そうした態度はいつか必ずその借りを返さねばならない時が来るでしょう。また、一方で、あまりに悲観的に考え、自暴自棄になってしまうのも、同じように不誠実なことだと思います。君たちには、社会を覆うこの「不安」に、真正面から向き合い、その「不安」のよって来たるところを見据えて、粘り強く考え抜く姿勢を貫いて欲しいと願っています。楽観もせず、悲観もせず、目の前の課題に真摯に向き合うことがわれわれに求められていることなのです。

 父母保証人の皆様、私たち高等科の教職員一同、ご子息のご卒業を心よりお祝い申し上げます。

彼らも高等科に入学して3年間が経ちました。高等科の入学式に新入生として参列していた日のことは、まだまだ記憶に新しいと思います。私も親として経験がありますが、高校の3年間は、本当にいろいろあった3年間だったのではないでしょうか。時には、はたで見ていて、ヤキモキしたり、ヒヤヒヤしたりすることがあったかもしれません。彼らはこの3年間、さまざまなことを体験して、今日卒業の日を迎えました。そしてこの目白のキャンパスでわれわれと同じ時間を共有したことが、よりよき成長の手助けになったとしたら、これほど喜ばしいことはありません。彼らはこれから自分の足で自分の道を歩いてゆくことになります。親としての心配はまだまだ続くと思います。また、われわれにとっても、卒業したからそれでおしまいだとは考えていません。というよりも、高等科での教育はこれからその真価が問われるのだと言っても過言ではないでしょう。そして10年後、20年後にそれぞれが、それぞれの豊かな実を結んでくれることを願っています。

3年間、学校運営のさまざまな局面にご協力いただいたことを心より御礼申し上げます。

 最後になりますが、卒業生のみなさん、この先何か困難なことに突き当たった時は、この高等科で過ごした日々を振り返ってみて下さい。きっと自分が進むべき方向が示されると思います。また、この3年間で築き上げた友人との絆を生涯大事にして下さい。みなさんにとってこの高等科が、いつまでも「特別な場所」であり続けることを心から願っています。

 以上をもちまして卒業式の告辞といたします。