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高等科NEWS

入学式 科長告辞

平成23年度高等科入学式・始業式

科長告辞

学習院高等科

科長 林 知宏

 

 新入生のみなさん,入学おめでとうございます.みなさんが入学した学習院高等科は歴史を持った学校です.公には1877年,明治10年の創立です.すでに130年以上の歳月が流れました.現在ある日本の学校の中でも最も古くに作られた学校の一つです.多くの人がここで出会い,多くを学び,たくさんの思い出を胸に刻んで巣立っていきました.本日,みなさんがまた新たに歴史の一ページを加えたことを心からうれしく思います.311日の地震災害は自然の力の恐ろしさをわれわれにまざまざと見せつけました.その一方で,正門の桜は例年のように,この入学式に合わせるかのように咲き誇っています.これもまた自然がわれわれにもたらしてくれたものです.正門の桜,新入生,そして新たな一年が始まる.いつもの学習院の季節感は今年もきちんと保たれています.

 みなさんにとって311日以降,いろいろな事が変わってしまったかもしれません.われわれが直面している困難は非常に厳しく,解決しなければならない問題はあまりにも多くあります.そこからの回復・脱出を安易に想像することはできません.ただでさえ経済活動が停滞気味であったのに加えて,この国全体が行き場を見失ってしまう危険性さえあります.かつて日本は,昭和の時代に大きく経済的な成長を遂げました.皆さんのご両親が子どものころに感じることができたような社会の展望を,もはや得ることができないのでしょうか.しかしそうした行き詰まりを感じるときだからこそ,自分たちの身の丈を確認し直し,あらためて再スタートすることが必要だと私は思います.そして過去に十分に考慮されてこなかった事柄が何であったかを見極め,新たな領域を開拓することに挑戦する,そのための準備がみなさんのテーマだと考えます.例えば生活水準を保ちながらエネルギーの確保を行っていくことは,長期的には必ず視野に入れるべき問題でしょう.誰も考えつかないことや手つかずのままになっていたことを成し遂げられるならば,これほど痛快なことはありません.そんな人物にみなさんが成長して欲しいと思います.

一方で,世界に目を向けるとこの間も新たな動きがあり,注目を集めました.それは中東・アフリカの諸国で長く続いていた政権が人々の行動によって変わっていったことです.かつてのように指導者や中核になるグループもなく,自然発生的に人々が集まり,声をあげる様子には驚かされました.インターネットを含めて情報手段の変化がもたらしたものであることは多くの人が指摘しているところです.人間の力によっても国という大きな単位で,しかも急激に何かが変わっていくのです.同時にこちらも石油というエネルギー源をめぐる問題が背景にあります.そうしたことが世界の中で起きているのだということもわれわれは気に留めなければならないのでしょう.

すでに引かれたレールに乗って何も考えずに動いていくこと,あるいは既成の道を器用に歩くこと,それらは高等科の生徒たちへの期待ではありません.むしろ道のないところに道を切り拓く者になること,そちらを望みます.もちろんそれは究極の期待です.究極の手前には何段階もいろいろなことがあります.現実の壁がさまざまな形で迫ってくるでしょう.歩みが滞ってしまうこともあるかもしれません.ゆっくり時間をかけて一つ一つステップを踏みしめ,一つ一つハードルをクリアして欲しいと思います.そしてじっくり力を養ってください.

 父母保証人の皆様,本日の入学式には学校法人学習院を代表し,波多野院長をはじめ,新美専務理事,内藤常務理事,東園常務理事,森田常務理事が出席しております.また来賓として内藤桜友会会長,小堀父母会会長,北白川中高桜友会会長にもご列席いただいています.私たち学習院高等科の教職員一同,心からご子息のご入学をお祝い申し上げます.高等科の3年間は何より心身が大きく成長し変化する時です.父母保証人の皆様と彼らとの距離感も変わってくることでしょう.今まで通りの愛情を注ぎつつ,彼らの成長を見守っていただければ幸いに存じます.

学習院高等科はみなさんが未来において行動するための基礎を養う場です.さまざまな機会が提供されるはずです.その機会を生かすためにぜひ自ら一歩前へ出る気持ちを持ってください.積極性を備えて学校生活を送るならば,この3年間はかけがえのないものになるでしょう.特にここで人と人の関係を築くことは何より大事です.年齢の異なる教職員,先輩・後輩との「タテ」の関係,そして同級生同士の「ヨコ」の関係は,おそらくみなさんにとって最大の財産になっていくはずです.

新入生のみなさんにとって高校生活が豊かなものになり,大活躍の場ができることを心から願いつつ,私の告辞とします.

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