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高等科NEWS

H25年度 卒業式

2013年度 卒業式が行われました。

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平成25年度高等科卒業式
科長告辞

学習院高等科
科長 林 知宏

 高等科3年生のみなさん,卒業おめでとうございます.思い起こせば,3年前中等科の卒業式の行われるわずか6日前にあの3月11日の出来事があったということです.当時は混乱の中で,卒業式自体を行うべきかどうか判断に迷いました.結局,卒業生とそのご父母の皆様だけの参加で実施し,当日直前にリハーサルをしました.下級生たちも全く参加せず,来賓の方々を招くこともなく,壇上にただ私一人だけが立っている卒業式でした.その後,高等科の入学式の予定もたたず,ようやく無事入学式を終えた後も,当初はクラブ活動も制限し,下校時刻を厳格に管理する日々が続きました.マスコミの放射能汚染の報道に一喜一憂し,交通機関の乱れを毎日心配していました.日常の学校生活で,当たり前のことが当たり前に行えることがどれほど貴重かを深く実感させられたのでした.みなさんの高等科生活がそのように始まったことは,いまでも記憶にとどまっていることでしょう.あれから3年の月日が経ちました.本日,高等科から新たに迎えた仲間とともに,ようやく本来の姿で卒業式をこのようにとり行うことができることを心から嬉しく思います.みなさんの喜ばしい卒業に際し,私からの伝えたいことを話したいと思います.

 ロシアのソチで開催されていた冬季オリンピックの報道に連日湧いていたとき,まったく別の新聞記事に私は引きつけられました.毎日新聞朝刊2月18日付「ドイツ再生エネルギーの課題」というものです.ドイツでは政治的立場を越えて脱原発の方向でコンセンサスが得られているようです.すでに,原子力による発電量は全体の15%,それに対して風力・水力・太陽光・バイオマス等々の再生可能エネルギーによる発電量は20%以上になっているそうです.しかし,現実がその方向で順調に進んでいくかというと必ずしもそうではありません.すなわち,発電した電気を送電するシステムが十分整っておらず,国が8年間で2800キロメートルに及ぶ新設を計画しました.しかし現実には年に数十キロ程度の実現にとどまっているようです.また風力発電を進めようとしても,建設する地域から景観を破壊されると反対運動にあったり,加えて電力料金が高騰してしまったりと別の難題が次々に待っているというのです.記事の中で,取材した日本の記者はドイツ人から「日本人はすぐに,どうすれば脱原発ができるか」と聞いてくると言われたことが紹介されていました.ドイツでも時間をかけて試行錯誤を重ねている.にもかかわらず,答えだけを性急に求める日本人が現れることに違和感を覚えたのでしょう.この問題が典型的なように,みなさんが進んでいくこの21世紀の前半,日本を含めた先進国と言われる国々は,解決の方法が簡単に見いだせない事柄に取り組まなければならないということです.ただ,違う見方をすれば,そのエネルギー問題のように,世界中が取り組むべきテーマ,世界中の人々が悩んでいる問題は誰もが共有できるということです.それを契機にして世界への扉が開かれる可能性も大いにあり得るのだと思います.

 いま,求められるのは一時的な脚光を浴びる「改革者」ではないと考えます.たとえ閉塞感が打破され,風穴があく爽快感を感じたとしても,風穴があいた後にそこをどのように埋めるかというより大事なことが残るはずです.私は,そうした真に社会が望む貢献を高等科の卒業生が果たして欲しいと思っています.みなさんが進む先はおそらく道が平坦でないでしょう.ときには,道そのものが自分の前についていないかもしれません.道のないところに道をつけていかざるを得ない場合もあるはずです.試されるのは,困難を引き受けるために精神の柔軟さがあるかということです.そしてその柔軟さが一歩前に踏み出す勇気を与えてくれるのだと考えます.柔軟さと勇気,これらをどれほどか備えて,これからの人生を歩んで行って欲しいと心から願っています.

 父母保証人の皆様,本日の卒業式には学校法人学習院を代表し,波多野院長をはじめ,東園常務理事,森田常務理事,堀口常務理事が出席しております.また来賓として内藤櫻友会会長,小島父母会副会長,渡邊中高櫻友会副会長にもご列席いただいています.私たち学習院高等科の教職員一同,心からご子息のご卒業をお祝い申し上げます.高等科の3年間において,彼らは確かな成長の跡を残したはずです.そのことは父母保証人の皆様の目から見てもお感じになるのではないでしょうか,ただ,同時にこれからまだ学んでいくことが多くあるとお考えになっているでしょう.私たちは彼らが担う未来に大きな期待を抱きつつ,いつでも可能な助言をしていく所存です.

 卒業生のみなさん,みなさんにとって中学,高校時代はいろいろな思い出が多く詰まった時期だったことでしょう.教室での勉学やクラブ,委員会活動,校外行事で経験したことは多くあったはずです.ただ,この高校卒業をもって,一つの区切りをつけるときが来たのではないでしょうか.今日でみなさんの子供時代は終わりです.大人になるために扉を開けて,前へ進んでほしいと思います.互いの進んだ方向や歩みのペースは異なっているでしょう.ある局面だけを見るならば,ひとと比較して自分の方が上になったとか,より前に進んだとか,自分だけが停滞してしまっているとか様々な感情をその場その場で抱くはずです.それでも,いつの日かこの仲間たちと自らが作り上げてきたことを確かめ,共感し合える時が来るでしょう.20年後,30年後,お互いの人生を認め合えるような関係をみなさんが保ち続け,学習院高等科がこれからも卒業生のみなさんにとって何かのよりどころとして機能することができればと願っています.みなさんが戻ってくる場所は,やはりこの高等科です.出発点を見定めるためにも,ここで築いた人と人のつながりを大切にして欲しいと思います.この学校を通じてみなさんがそうした人間関係を作ることができたのであれば,それは私たち学習院高等科の教職員にとって何よりも嬉しいことです.卒業生のみなさんの大活躍を心から願いつつ,私の告辞とします.


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